2013年09月28日

高層建築史1 超高層ビルディング

21世紀に入り、従来よりもはるかに高い高層建築の計画が世界各地で動き始めています。かつては通信塔以外の超高層建築のほとんどがアメリカの摩天楼でしたが、近年は経済力を付けた国が増え、長期にわたって続いた世界的な停滞感・消極的な社会情勢からの脱却の動きも出てきたため、各国で建設されるようになりました。
構想レベルまで含めると、高さ1km、あるいは高さ1マイル (1,600 m)を超える超高層ビルの建設プロジェクトの話も出ています。

近代高層ビルとして、世界で最初と称されるのが、エクイタブル生命保険ビル(ニューヨーク、高さ40m、1870年5月1日竣工、1912年1月9日火災で崩壊)です。また鉄骨を入れた最初の高層ビルは、ホームインシュアランスビル(シカゴ、高さ42m、1884年竣工、1931年に解体)とも言われています。この頃、同規模のビルはすでに複数建てられていました。
1871年10月にシカゴ大火があり、市街地の大半を失い、その復興過程でオフィスビルの需要が高まります。高層建築が新たな潮流となり、その中のひとつが、オーディトリアムビル(シカゴ、塔まで入れて106m、1889年竣工)でした。ニューヨークでも100m級のニューヨークワールドビル(ニューヨーク、106.4m、1890年完成、1955年解体)、マンハッタン生命保険ビル(ニューヨーク、高さ106m、1894年竣工、1964年解体)、現在の超高層オフィスビルのはしりとも言えるパークロウビル(ニューヨーク、119m、29階、1899年7月20日竣工、現存)、オフィスビルではあるがルネサンス様式で高層ビルとは言いがたいフィラデルフィア市庁舎の塔がこの記録を塗り替え(フィラデルフィア、167 m、1901竣工、現存)、それを超えたのがシンガービル(ニューヨーク、186.57m、1908年竣工、1968年解体。シンガーミシンの本社ビル)、さらに200m級の時計塔の付いたメトロポリタン生命保険会社タワー(ニューヨーク、213.36m、1909年竣工、現存)と一気に高くなっていき、ウールワースビル(ニューヨーク、241.4m、1913年完成、現存)に至ります。

このウールワースビルは、それまでのビルに多く見られた時計塔のような部分高層ではなく、建物全体がゴシック・リバイバル様式(※1)の摩天楼になっています。そのためデザインはヨーロッパに多く見られる大聖堂にも似ています。この頃マンハッタン島は現在のような高層ビルのスカイラインの原型が出来上がっていきますが、しばらくはウールワースビルが世界一の座を維持しました。その後、世界一競争が始まり、バンク・オブ・マンハッタン・トラスト・ビル(40ウォール・ストリート、現トランプビル、ニューヨーク、283m、70階、1930年4月完成)、アールデコ調(※2)の独特の曲線デザインで知られるクライスラービルが続けて完成します(ニューヨーク、塔頂部320m、1930年5月28日に完成)。このビルは当初283mで完成予定でしたが、工事中に追いぬかれたため、尖塔部分を追加した経緯があります。エッフェル塔(当時312m)よりも高かったため、ビル以外も含めて世界一の建築物となりました。

ところがこれもすぐに追いぬかれます。抜いたのが、あのエンパイアステートビル(ニューヨーク、塔頂部443.2m、1931年5月1日完成)。102階建てで、その後42年間世界一の座にあり、映画でキングコングがよじ登り、1945年7月28日にはB-25爆撃機が衝突(※3)したこともあるビルです。世界一競争のために作られ、不況で長いこと空き室だらけの「エンプティー・ステート・ビルディング」でしたが、今は観光名所の一つ。これを抜いたのが、1973年4月4日に落成した双子ビル、ワールド・トレード・センタービル(ニューヨーク、最頂部(526.3m、110階)です。
このビルは、モダニズム(※4)の無機質な外観を極めたようなデザインですが、ニューヨークのスカイラインに並ぶ2つのビルは象徴的なものとなり、映画などでの遠景シーンには必ず登場し、新名所となりました。中に柱を設けず、外壁に支柱を並べた構造はオフィス面積を広げ、超高層ビルの難敵である風圧に対しても有効でしたが、2001年9月11日の同時多発テロで旅客機が突入して支柱が破壊され、発生した火災の高熱で溶解、自重を支えきれなくなって2棟ともひしゃげるように崩壊し、膨大な犠牲者と数多くの美術品を損失しました。跡地にはワンワールドトレードセンタービル(541.3m、2014年完成予定)など複数の超高層ビルを建設中。

双子のワールドトレードセンターを抜いて世界一になったのが、シアーズタワーで(シカゴ、現ウィリス・タワー、527.3m、1973年5月3日完成)、ほぼ同時期の完成、高さもほぼ同じですが、ワールド・トレード・センタービルの方が有名でした。
シアーズタワーまで、すべてアメリカで、そのほとんどがニューヨークかシカゴでした。
1994年4月、マレーシアのクアラルンプールに、双子の超高層ビル、ペトロナスツインタワーが完成(高さ452m)。アンテナを除く本体の高さでシアーズタワー(本体442.3 m)を抜き世界一となります。20世紀で最も本体が高い超高層ビルでした。デザインもイスラムのミナレット風な独特のもの。以降、アメリカ以外の国々で次々と建設が始まり、デザインも多種多様になります。

2004年には、初めて500mを超えた、台湾・台北市の台北101(最頂部509.2m、本体449.2m)が完成。建設中に大地震が起こり、クレーンが落下して死者5人を出しますが、ビルに影響はありませんでした。逆台形の「節」を多数積み重ねたようなデザインです。
2007年7月、高さ非公開で建設中のUAE(アラブ首長国連邦)のブルジュ・ハリファが高さで世界一に達します(ドバイ、尖塔頂部828m、本体636m、160階。2010年1月4日開業)。完成時に金融危機で資金に苦しみ、ビルも債権付きとなったため、連邦の盟主で石油大国のアブダビ首長国の支援を受け、同国ハリファ首長の名を冠することになりました。
トップがダントツに高いビルとなったため、世界一更新は、計画中のハイパービルディングの実現を待つことになるかもしれませんが(※5)、2位以下の300〜500mくらいの超高層ビルの建築はアジア・中東、そしてこれまで高層ビルの少なかったヨーロッパでも加速度的に増えています。

現在、具体的に計画中のものとして、クウェートのブルジュ・ムバラク・アル=カビール(マディナ・アル=ハリール、1001m、200階)、バーレーンのムルジャン・タワー(マナーマ、1022m)、UAEのナキール・タワー(ドバイ、1400m?、228階?)、サウジアラビアのキングダム・タワー(ジッダ、1610m?)、UAEのドバイ・シティ・タワー(ドバイ、2400m、400階)があります。ただし現在クウェートで建設中の都市マディナ・アル=ハリールに作られる予定のブルジュ・ムバラク・アル=カビールなどはかなり具体的ですが、キングダムタワーやナキール・タワーなどは、計画がコロコロ変更されていて、どうなるかわかりません。

日本の超高層ビル、歴史上の高層建築物、および、電波塔・通信塔については別の項で取り上げる予定です。

※1:ゴシック・リバイバル様式とは、18世紀後半から19世紀にかけて流行した、中世に教会建築として盛んだったゴシック様式を近代風にアレンジした建築様式。教会や駅舎などに多いがアメリカでは高層ビルのデザインにもなっている。
※2:アールデコ様式とは、1925年のパリ万博から盛んになったデザイン様式。曲線や幾何学的装飾が多用されている。日本の同時代の建築物にも流行した。しかし流行は短期間で終わっている。
※3:衝撃でエレベーターが300mも落下したが、乗っていたエレベータガールは重症を負うも助かった。
※4:モダニズム様式とは、装飾などを排し、合理性や機能だけを追求したようなデザイン。それまでの建築物に見られた彫刻や曲線的デザインの乏しい、直方体で窓が整然と並んだような現代のビルがモダニズム。1960年代以降、モダニズムに反発したポストモダンが唱えられるようになるも、定義が曖昧で、むしろ現代では何でもありの様相になってきている。
※5:中国湖南省長沙市で超高層ビル「天空都市」(838m、202階)の着工式が2013年7月22日に行われる。本体を7ヶ月、全体で10ヶ月で完成させるという話で疑問視された上に、着工式の直後に当局から中止命令が出て工事は始まる段階で中断している。ただ準備は進んでいる模様。

☆この内容は総合年表HP(http://www.sogonenpyo.jpn.org/)に追加されます。
posted by あお at 20:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 高層建築史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。